「資さんうどん」をはじめ、関東への進出が相次ぐ「福岡発祥うどん店」。知る人ぞ知る「うどん王国」には、言われてみれば気になるハテナがいっぱい。知られざる、うどん王国の秘密とは?
■福岡老舗チェーン「因幡うどん」が東京初上陸
世界中から愛される日本の「うどん」。今、ご当地うどんの関東進出が相次ぎ、まさに「関東うどん戦国時代」に。中でも、勢力急拡大なのが福岡うどんです。
元福岡県在住
「僕は熊本で生まれて福岡にも住んでいた。これが東京で食べられるということが感動です」
先月、流行最先端の街・原宿にオープンした「因幡うどん」。創業74年、福岡の老舗チェーンが満を持しての東京初上陸です。
店の看板メニューは、かき揚げスタイルの“ごぼう天うどん”です。フワフワでやわらかい麺は、まさに王道の福岡「やわうどん」。
来店客
「讃岐うどんと違って、柔らかさが癖になっておいしい」
かき揚げ状の丸いごぼう天は、食べている間に衣がスープに溶け込み…。
来店客
「ごぼうがすごくカリカリでおいしい」
この男性、聞くと都内で讃岐うどん店を営み、きょうは偵察に来たとか…。
「ごぼうがコリコリ。それに対してうどんが柔らかいのでバランスが良い。食感が面白い」
■なぜ「ごぼう天」? 意外なルーツ
同じく今年、福岡から東京初進出し話題の「資さんうどん」。この店でも、名物は「ごぼう天」。一番人気の「肉ごぼ天うどん」では、スティック状14センチの“ごぼ天”が目をひきます。
「ごぼうって特産なんですか?どうしてごぼうなのかしら」
「なんでえび天がメインじゃないのかめちゃくちゃ気になる」
なぜ、福岡うどんと言えば、ごぼうの天ぷらなのか?取材班は福岡へ向かいました。
福岡といえばラーメンのイメージですが、ご当地うどんチェーンだけでも二桁に達するうどん王国です。そんな街で、ごぼう天について聞きました。
福岡県民の親子
「(Q.ごぼう天うどん、東京だと珍しくて)え!?」「ごぼ天がですか?」
「(Q.なんでごぼう天?)なんでかな、なんでやろ」
福岡県民
「なんで~なんで知らない」
「(Q.ちょっと調べようと…)こっちが聞きたい」
向かったのは、福岡県内で最も古いうどん店。創業は明治15年、140年以上続く名店「かろのうろん」です。一番人気は伝統だしと、ごぼうのうま味が手打ちの王道「やわうどん」に染み込む「ごぼう天うろん」。
4代目店主・瓜生高康さんに聞きました、この店がごぼう天うどんの元祖ですか?
「うちは一番古かですもんね。でも、ごぼう天はうちじゃなかとは思うんですけど。父の話ちゃなんか『乙ちゃんうどん』って今はもうなかとですけど」
「乙ちゃんうどん」は、かつて天神で営業していた店ではないかとの重要な情報をゲットできました。しかし、その店は昭和初期に閉店。少しでも手がかりがないかと、福岡市の博物館へ。
博多の歴史や文化を記した貴重な文献の中に、乙ちゃんうどんを発見しました!挿絵を見ると、のれんに確かに「ごぼう天」の文字。さらに「うどんのすめ(=だし)もおいしかったが、裏で揚げていたイモ、ゴボウ、イワシなど入れて食べるとさらにおいしかった」との記載がありました。
大正時代以前、店の手伝いにきていた店主のおいが、試しに店の裏で揚げていた天ぷらをうどんに乗せたところ大評判に。中でも、特にごぼうは大人気。
福岡市博物館 学芸員 石井和帆さん
「大きな樽一杯分のごぼうが一日でなくなっていたことも書かれていますので、ごぼう天が特に人気だったこともうかがえます」
その後、人気のごぼう天は福岡中に広まり「福岡うどんといえば、ごぼう天」という文化ができたのではないかといいます。
80年以上前に閉店した乙ちゃんですが、実は…。
「戦後になると、うどん店がいくつか出てくる。乙ちゃんうどんの再現を目指したのが『因幡うどん』と言われています」
先月原宿に進出と紹介した「因幡うどん」こそが、乙ちゃんを受け継ぐ店だったのです。
向かったのは、福岡に現存する最も古い店舗。40年以上切り盛りしている名物店長・森口由紀子さん(84)に聞くと…。
「元々『乙ちゃんうどん』に創業者が行って、自分もおいしいうどんを皆に食べてほしいということで。こういうかき揚げのうどんを研究して、ずいぶん苦労してこの味が出せたと思う」
福岡のごぼう天うどんの原点ともいえるこの一杯。丸いかき揚げは時間と共にハラハラとくずれ、ごぼうの風味とだしのうま味を一体にします。
■勢力拡大中の「資さんうどん」 なぜ“すけさん”?
続いては、この半年間で関東に4店舗出店と勢力拡大中、「関東うどん戦国時代」の風雲児「資さんうどん」のハテナです。
スティック状のごぼう天がインパクト大、話題の資さんうどんですが、こんな声も聞かれました。
なぜ「しさん」ではなく「すけさんうどん」という名前なのか?そこで福岡市内の資さんうどんに向かいました。
「資さん」をソウルフードと語る、地元の人々なら知っているのでは…。
「(Q.なんで“すけさん”と読む?)なんでだろう?分からない」
「それは考えたこともない。全然知らん。創業者が水戸黄門の親戚とか」
「私も水戸黄門の助さん格さん」
「創業者の名前を一字取ってとか」
半分正解!資さんうどんの創業者は大西章資(しょうじ)さん。では、なぜ「じさん」ではなく「すけさんうどん」に?
資さんうどん マーケティング部
伊藤典子さん
「実は“名前の読み間違い”がきっかけで資さんうどんという屋号が誕生した」
それは創業準備中、病院に行った時のこと…。
「大西あきすけさん!大西あきすけさん!」
これを笑い話として周囲に話していましたが、いざ屋号を決める際に…。
「自分の名前を一文字とった屋号を付けたいと考えた際に、従業員から『あの読み間違えされた“すけさん”でいい』というアドバイスがあって今の“すけさんうどん”という店名が付いたと聞いております」
■絶品めん秘密&幸せメニュー
読み間違えから生まれた資さんうどんは、昭和51年に1号店を出店。「すけさん」という親しみやすさもあってか、今では福岡県内だけで44店に上ります。人気の秘密は、麺です。
福岡県民
「福岡はどちらかというと柔いですけど、そこまで柔らかくないし、ちょうど中間。関東とか讃岐よりも硬くない。僕は一番好き!」
元々、せっかちな博多っ子に素早く出せるようゆで置きしたため、柔らかくなったとも言われる福岡の「やわうどん」ですが、資さんの麺は、表面は柔らかくなめらかで、中はコシがありモチモチが特徴です。
さらに、魅力なのが「うどんファミレス」的なメニューの豊富さ。焼うどんにカツとじ丼、アツアツのおでん。そして、スパイシーな中に素材のうま味が溶け込んだカレーライスは「専門店なみの本格派」との声も。
常連客が絶賛するのは、一度に色々なモノを食べたい人に人気の肉ごぼ天うどんに、カツとじ丼とぼた餅の“しあわせセット”(1050円~)。
「うどんが食べれてご飯も食べられてデザートも付いてる。最高やね、まさに“しあわせ”」
そして、多くの客がシメに食べるのが「ぼた餅」です。
「甘くて最後にスイーツ感覚で」
「資さんは『しめのぼた餅』。おいしか~」
年間540万個も売れる名物ですが、東京ではこんなハテナも…。
「あんこは好きですけど、うどんと食べようとは思わない」
「炭水化物と炭水化物」
「なんでぼた餅なんだろう?」
■なぜ、うどんとぼた餅?
資さんうどんには、なぜぼた餅があるのか?その謎を解くカギが、2000年に撮影された映像にあります。北九州・小倉の屋台街の屋台になんと「ぼた餅」が!
伊藤さん
「昔、小倉で屋台が栄えていた時代がありまして、そちらでお酒は提供せずに代わりにぼた餅を置く文化がありました」
かつて重工業の街として栄えた小倉では「あすへの活力」のため、ぼた餅を食べる習慣があったといいます。そして、屋台の中には、お酒の代わりに出すところも。それにしても、なぜお酒を出さず、ぼた餅を?
かつて屋台が栄えた小倉の街にある資さんで、地元の常連さんが教えてくれました。
「お酒を出したらけんかが始まるの、屋台の中で…。で、お酒を出さない代わりにおはぎ(ぼた餅)が出たのが最初。『甘いモノ食べてまったりして帰って下さい』ってのが最初」
飲みすぎでのけんか防止ということのようです。
「ぜひ、食べたい方は小倉に来てください」
ほろ酔いのお父さんも、お土産に購入。すると…。
「これ食べたかったら、ここにきっちゃい。ここ来たら食べれるけ…じゃあね」
差し入れ頂いちゃいました。本当にありがとうございます!
■新感覚うどん!?謎のうどん集団
うどん王国・福岡ですが、実は今、新たな動きが。
県民にうどんについて聞いていると、聞きなれない名前が。
「豊前裏打会っていうのが北九州にあって、グループでどんどん増えている」
「豊前裏打会っていうのがあって色々な店舗がある」
福岡県民が口々に語る謎のうどん集団“豊前裏打会”とは一体?
調べてみると、福岡だけでなく、すでに都内へも進出中。他では味わえない独創的なうどんだといいます。
福岡県を中心に44店舗ある「豊前裏打会」の中でも屈指の人気店「麺屋満月」。ランチ時には店内は満席に。
看板メニューは「もつニラつけ麺」です。ざるうどんをスープにつけ楽しむつけ麺タイプ。上質な国産のホルモンをじっくり煮込み、フレッシュなニラを加えた甘辛もつ鍋風スープ。最大の特徴は、麺。福岡うどんなどの王道とは異なる、モチッとしたコシの強さが売りです。
福岡県民
「バリうまです。麺はすごくモチモチしています。ホルモンの油が麺に絡んでスープが甘辛でめちゃめちゃおいしいです」
「裏打会は麺がおいしいですよね、新しい感覚ですね」
福岡うどん名物「ごぼう天」もとてもユニーク。スライスしたごぼうを大きく渦上に積み上げていき、器からはみ出すほどの巨大なトルネードスタイルです。ごぼう天の下には、きつねという二刀流。
「二刀流でバリうまいですね。大谷選手にもぜひ食べてほしい」
実は、うどん集団「豊前裏打会」とは、北九州の名店「津田屋官兵衛」の伝説の麺職人といわれる横山和弘氏のもとで修行し、のれん分けを許された職人のグループ。
独自ブレンドした裏打会特製の小麦粉を、こねることと熟成を何度も繰り返し「喉ごしがよくコシのある麺」「個性と情熱あるメニュー」を作り出すことがおきて。
フランチャイズのような“縛り”はなく、メニューは各店主に任せ、独創的なうどんが評判を呼んでいます。
麺屋満月 大将
岩下輝さん
「もうみんな個性ギンギンで、そこで勝負している感じですね。ちなみに東京にも裏打会のうどん屋はできています」
そう、東京にも次々と進出中。雨が降ろうが、並んででも食べたい人気店。新宿にある「豊前裏打会 萬田次郎」。
「1時間半から2時間くらい(待った)」
「1時間半並んだかいがあります」
東京でも「個性がギンギン」。国産の大ハマグリと頂くうどんに、ごぼう天は個性が光る「畳スタイル」。
そして、今からが旬の限定のおうどんは、巨大なとうもろこしのかき揚げがのったぶっかけうどん。つゆをかけると、麺の透明度が際立ちます。
「福岡が本店なのは知ってたけど、麺が半透明なのは初めてで新鮮」
「すごく喉ごしも良くてすごく食べやすいです」
新鮮なとうもろこしは九州・熊本産。
「うーん、すっごい甘いです」
「とうもろこしで夏を先取りした気がして、夏楽しみたいなってなりました。夏開幕ですね」
[テレ朝news] news.tv-asahi.co.jp/
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